あい ホールディングス 2026年6月期通期決算:営業利益100億円超と最終減益の中身

投資分析

※この記事は会社が公表した資料を基にした個人の記録・分析であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資の最終判断はご自身でお願いします。

あい ホールディングス(3076)が2026年8月19日に公表した2026年6月期通期の決算をまとめます。営業利益は100億円を超えましたが、最終利益は前期のM&A関連利益の反動などで減少しました。

決算概要

  • 売上高は850億24百万円(+28.4%)、営業利益は107億62百万円(+21.1%)
  • 情報通信事業へのナカヨの連結が増収に寄与し、設計事業も大型の耐震診断で大幅増益
  • 親会社株主に帰属する当期純利益は119億37百万円(-43.7%)だが、前期に多額のM&A関連利益が含まれていた反動が大きい
  • 2027年6月期は小幅な増収・営業増益を予想し、年間配当は15円増の140円を見込む

※増減率は前年同期比。

決算の数字と背景

連結業績は次の通りです。

項目 2026年6月期 2025年6月期(前期) 前年同期比
売上高 850億24百万円 661億97百万円 +28.4%
営業利益 107億62百万円 88億89百万円 +21.1%
経常利益 125億35百万円 90億8百万円 +39.2%
親会社株主に帰属する当期純利益 119億37百万円 212億2百万円 -43.7%
EPS 224.08円 405.63円 -44.8%

※2025年6月期の数値は、企業結合に係る暫定的な会計処理の確定を反映した修正後の数値。

売上高と営業利益が伸びた一方、売上高営業利益率は13.4%から12.7%へ低下しました。ナカヨの連結で売上規模が広がったものの、カード機器及びその他事務用機器事業の大幅減益などがあり、増収率ほど営業利益は伸びていません。

経常利益は営業利益以上に伸びました。本業以外でも、出資している会社の利益の一部を自社の利益として取り込む「持分法による投資利益」が、4億15百万円から8億23百万円へ増えたためです。為替レートの変動による損益も追い風でした。前期は円換算の影響で4億82百万円の損失(為替差損)でしたが、当期は5億74百万円の利益(為替差益)に変わっています。

最終利益の減少は、前期にM&Aに伴う負ののれん発生益などを計上した反動です。特別利益は192億12百万円から39億19百万円へ減少し、法人税等合計も前期のマイナス66百万円から当期の41億90百万円へ増えました。

ワンポイント:のれんと負ののれん発生益

M&Aでは、買収額と買収した会社の純資産の価値との差額を「のれん」といいます。買収額が純資産の価値を下回ると、その差額は「負ののれん発生益」として利益に計上されます。買収した期に生じる一時的な利益のため、通常の事業で得た利益とは分けて見ます。

当期の特別利益にも固定資産売却益38億36百万円が含まれます。こうした一時的な要因で最終利益は大きく動きます。事業そのものがどれだけ稼げたかは、営業利益の伸びで見るほうが分かりやすいです。

事業ごとの状況

事業別では、情報通信と設計事業が全体の増収増益を大きく支えました。

セグメント 2026年6月期売上高 前年同期比 セグメント利益 前年同期比
セキュリティ機器 158億90百万円 +4.5% 61億87百万円 +0.6%
カード機器及びその他事務用機器 24億54百万円 -21.0% 3億10百万円 -62.7%
情報機器 126億71百万円 -6.1% 5億62百万円 +21.6%
計測機器 54億42百万円 +8.8% 7億86百万円 -4.8%
情報通信 271億2百万円 +129.2% 12億49百万円 +84.3%
設計事業 74億36百万円 +33.6% 14億82百万円 +213.5%
その他 140億26百万円 +16.9% 3億93百万円 +141.1%

※売上高は外部顧客向け、利益はセグメント利益です。

セキュリティ機器:増収増益を継続

マンション向けでは分譲物件の新規受注が好調で、賃貸物件の設備更新も順調でした。一般法人向けでは、官公庁のAI画像解析を使った次世代セキュリティシステムに加え、金融機関や工場から新規受注を獲得しています。

決算説明資料では、6年連続の増収増益で過去最高益を更新したと説明しています。ただ、増収率に対して利益の伸びは小さめです。来期予想も売上高166億円、営業利益64億円と、伸びは緩やかです。

カード機器及びその他事務用機器:新製品の遅れで大幅減益

カード機器は病院向けが回復傾向にあり、金融機関向けの即時キャッシュカード発行機も受注しました。一方、鉄骨CADは新製品「AiCad-sf」の機能強化と追加により、本格販売が遅れています。

この販売時期のずれが響き、セグメント利益は6割を超える減少となりました。来期は売上高38億円、営業利益10億円への回復予想です。予想を達成できるかは、新製品の立ち上がりにかかっていると考えています。

情報機器:減収でも利益は回復

業務用カッティングマシンは設備更新需要や欧米での販売回復を取り込みましたが、個人向けは欧米市場の低迷が続きました。売上高は前年を下回った一方、セグメント利益は前年を上回りました。

グループ会社のグラフテックは、家庭用小型カッティングマシン「シルエット」製品の国内販売を担っていたグループ会社、シルエットジャパンを吸収合併、事業運営の効率化と経費削減を進めます。2027年6月期予想は売上高144億円、営業利益7億円です。

計測機器:コスト増を価格転嫁できず減益

売上高は伸びましたが、コスト増加分を価格へ十分に反映できず、セグメント利益は減少しました。国内では自動車関連が弱い一方、防衛関連の重工業向けは堅調でした。

2026年7月1日からは一部製品を値上げしたとのことです。また、グループ会社のグラフテックと岩崎通信機の計測機器事業を統合するため、別会社のグラフテック岩通計測を設立。新設したグラフテック岩通計測でコスト削減と販路拡大を進めます。

情報通信:ナカヨ連結と採算改善が寄与

当期からナカヨの通信機器事業が加わったことで、開示上の売上高は2倍を超えました。

決算説明資料にある岩崎通信機とナカヨの合算参考値では、売上高は291億22百万円から272億89百万円へ減少した一方、営業損益は91百万円の赤字から12億49百万円の黒字へ改善しました。ナカヨも営業赤字から黒字へ転換しています。グループでコスト削減を進め、2026年3月から岩崎通信機の一部製品の生産をナカヨ工場へ移管しました。

設計事業:大型案件で利益が3倍超

構造設計を安定して受注したことに加え、大型の耐震診断が寄与しました。これにより、セグメント利益は前年の約3.1倍に増えています。

大型案件による押し上げは2027年6月期に剥落する見通しです。売上高59億円、営業利益5億円という会社予想からも、この高い利益水準は一過性と見ることができます。

その他:脱炭素システムが成長

その他事業には、脱炭素システムや保守サービス、リース、不動産などが含まれます。売上高と利益はいずれも増加しました。

脱炭素システムでは、2026年6月末のクラウド稼働件数が1,830件、月間利用料が1,134万円となりました。国内の新規案件や海外の販売チャネル拡大も進めています。

通期業績と来期見通し

2027年6月期の業績予想を当期実績と並べます。

項目 2027年6月期予想 2026年6月期実績 前年同期比
売上高 860億円 850億24百万円 +1.1%
営業利益 110億円 107億62百万円 +2.2%
経常利益 117億円 125億35百万円 -6.7%
親会社株主に帰属する当期純利益 90億円 119億37百万円 -24.6%
EPS 168.94円 224.08円 -24.6%

営業利益の過去最高更新は、セキュリティ機器、カード機器、情報機器などの増益を前提としています。設計事業は大型案件の反動減を織り込んでいます。

経常利益と最終利益は減益予想です。当期の最終利益には固定資産売却益が含まれるため、来期予想と比べる際はこの一過性利益を考慮する必要があります。岩崎通信機とナカヨの融合を加速し、情報通信事業の相乗効果を早期に実現する方針も示されました。

株主還元

2026年6月期の年間配当は1株125円となる予定で、前期の100円から25円増えます。2027年6月期はさらに15円増の140円を予想しており、実現すれば6年連続の増配です。

あい ホールディングスの配当方針は、DOE6%と配当性向50%のうち、金額が大きい方を基準としています。

2027年6月期の予想配当性向は82.9%です。当期の最終利益に一過性利益が含まれ、次期は最終減益予想ですが増配を予定しています。DOEを重視する方針に沿った配当予想ですが、かなり配当性向が高まる点は気になりました。

まとめ:本業は伸びたが、一過性利益を分けて見たい決算

2026年6月期は、情報通信と設計事業が成長をけん引し、営業利益が100億円を超えました。ナカヨの黒字転換も、M&A後の改善として注目できます。

最終利益は前期のM&A関連利益の反動などで大きく減り、当期にも固定資産売却益が含まれます。そこで、最終利益だけでなく、営業利益の推移と事業別の採算を見ます。2027年6月期に確認したいのは、カード機器の新製品、情報通信の統合効果、設計事業の大型案件剥落後の利益水準です。

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