東京海上HD 2027年3月期 1Q決算:修正純利益は減益だが概ね計画通り

投資分析

※この記事は会社が公表した資料を基にした個人の記録・分析であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資の最終判断はご自身でお願いします。

東京海上ホールディングス(8766)が2026年8月12日に公表した2027年3月期第1四半期の決算をまとめます。修正純利益は減益でしたが、進捗は概ね計画どおりと説明されています。

決算概要

  • 保険収益20,471.3億円(+12.3%)、親会社の所有者に帰属する四半期利益2,643.0億円(+3.3%)
  • 修正純利益2,613.5億円(-3.6%)、国内損保の減益を海外保険と国内生保が一部補完
  • 海外保険は修正純利益が+9.2%、国内損保は北米賠責の大口事故などで-20.8%
  • 通期業績予想と年間配当予想245円はいずれも変更なし

※増減率は前年同期比。

決算の数字と背景

連結業績は次の通りです。

項目 2026年4〜6月 前年同期 前年同期比
保険収益(IFRS) 20,471.3億円 18,227.8億円 +12.3%
保険収益およびソリューション事業における売上収益 21,187.5億円 19,056.1億円 +11.2%
税引前四半期利益(IFRS) 3,781.7億円 3,391.9億円 +11.5%
親会社の所有者に帰属する四半期利益(IFRS) 2,643.0億円 2,559.6億円 +3.3%
修正純利益 2,613.5億円 2,710.6億円 -3.6%
基本的1株当たり四半期利益 138.25円 133.49円 +3.6%

決算資料には、似た名前でも意味が異なる指標があります。ここでは、主な3つを簡単に整理します。

  • 保険収益(IFRS):その期間に提供した保険の補償に対応する収益です。受け取った保険料そのものとは異なり、IFRSの損益計算書に載る正式な数値です。
  • 保険収益およびソリューション事業における売上収益:保険収益とソリューション事業の売上収益を合計した、グループ全体の事業規模を見るための指標です。
  • 修正純利益:親会社の所有者に帰属する利益から、市場環境によって振れやすい資産の売却・評価損益やALM・ヘッジ関連損益などを調整した、会社独自の指標です。事業の実力や進捗を説明する際に重視しています。

保険収益は前年同期比+12.3%となり、収益規模は拡大しました。利益は指標によって動きが分かれ、IFRSの親会社の所有者に帰属する四半期利益は+3.3%、修正純利益は-3.6%です。この記事では、決算書上の最終利益は前者、業績予想に対する進捗や各事業の状況は後者を中心に見ています。

事業ごとの状況

事業ごとの状況は次の通りです。

事業区分 保険収益・売上収益 前年同期比 修正純利益 前年同期比
国内損害保険 7,676.9億円 +3.2% 772.4億円 -20.8%
国内生命保険 650.7億円 -1.1% 215.8億円 +16.2%
海外保険 12,258.2億円 +18.9% 1,643.3億円 +9.2%
ソリューション 716.2億円 -13.5% 14.8億円 -49.6%

※国内損害保険、国内生命保険、海外保険は保険収益、ソリューションは売上収益です。
※前年同期比は、今期からの区分変更に合わせて会社が組み替えた数値との比較です。

国内損害保険:大口事故などで修正純利益が減少

国内損害保険は、自動車・火災・新種などの損害保険を国内で引き受ける事業です。保険収益は+3.2%でしたが、修正純利益は-20.8%となりました。

北米の賠償責任保険にかかわる大口事故を主因として、利益が計画を下回ったと説明されています。自動車保険では事故の頻度は通期予想どおりだった一方、インフレの加速で1件当たりの保険金が想定を上回りました。円安に伴う外貨建て支払備金の積み増し負担も影響しています。

損害率と事業費率を合計したコンバインド・レシオは88.7%で、前年同期から+2.1ポイントでした。この比率が低いほど、保険引受の採算は良好です。今回の採算悪化は、大口事故による下振れと、自動車保険の保険金単価上昇を分けて捉える必要があります。

国内生命保険:ブロック出再で利益が改善

国内生命保険は、終身保険や医療保険などを扱う事業です。保険収益は-1.1%でしたが、修正純利益は+16.2%となりました。

増益の主な背景は、保有契約をまとめて再保険会社へ移すブロック出再による収益改善です。新契約年換算保険料は前年同期比+23.4%と伸びた一方、新契約CSMは-21.9%でした。CSMは、保険契約から将来得られると見込む利益を表す指標です。新契約CSM、全体の利益ともに概ね計画どおりと説明されています。

新契約年換算保険料が伸びる一方で新契約CSMは減少しており、契約の量と将来利益が同じ方向に動くとは限らないことが分かります。

海外保険:保険引受と資産運用が増益をけん引

海外保険は、北米を中心に、一般的な保険では対応しにくいリスクを扱うスペシャルティ保険などを展開する事業です。保険収益は+18.9%、修正純利益は+9.2%でした。

保険引受と資産運用がともに堅調で、計画をやや上回ったと説明されています。コンバインド・レシオは88.8%で前年同期から-0.1ポイントでした。ただし、修正純利益は為替の影響を除くと前年同期比-2.1%です。円換算の+9.2%には、為替による押し上げが含まれています。

ソリューション:決算期変更と官需減少で計画未達

ソリューション事業は、コンサルティング、投資顧問、投資信託、介護などを扱っています。売上収益は-13.5%、修正純利益は-49.6%となり、会社計画を下回りました。

主因は、ID&Eの決算期変更と官需の減少です。また、前年同期には3月末までに完了した案件の計上時期のずれによる利益が含まれていたため、この反動による減益もあります。今回の数字には、官需減少による弱さと、決算期や計上時期による比較上の減益が混在しています。

業績見通しと進捗

項目 通期予想 第1四半期実績 進捗率
Total Business Volume 95,320億円 24,060億円 25.2%
親会社の所有者に帰属する当期利益 8,300.0億円 2,643.0億円 31.8%
修正純利益 9,500.0億円 2,613.5億円 27.5%

※Total Business Volumeは、保険事業のグロス収入保険料とソリューション事業の売上高を合計した管理指標。

通期業績予想に変更はありません。修正純利益の第1四半期進捗率は約28%であり、概ね計画どおりとのことです。

国内損害保険とソリューションは計画を下回る一方、海外保険は計画をやや上回り、国内生命保険は概ね計画どおりでした。国内損害保険では保険料率引き上げの効果が第2四半期以降に大きく表れるとの説明もあります。今後の動きに注目していきたいです。

株主還元

年間配当予想は1株当たり245円で、直近予想から変更はありません。前期の年間218円からは27円の増配予想です。

なお東京海上の株主還元方針では、配当を株主還元の基本とし、利益成長に応じて持続的に高めるとしています。

まとめ:国内損保の採算回復を要確認

今回の決算で良かった点は、海外保険と国内生命保険が修正純利益を伸ばし、グループ全体では概ね計画どおりに進んだことです。IFRSの親会社の所有者に帰属する四半期利益は増加しました。

一方で、国内損害保険は北米賠責の大口事故や自動車保険の保険金単価上昇により計画を下回り、ソリューション事業も官需減少などで遅れています。次回決算で最も重視したいのは、国内損害保険のコンバインド・レシオと保険金単価が改善に向かうかです。通期達成を判断するうえでは、修正純利益9,500億円に対する進捗も材料になります。

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